灼熱の木曜日/日々、徒然。

日々、思うことを書き綴っています。

グラデーション、のほんの一部。

なんだか今なら書ける気がして。

 

朝ドラ「おかえりモネ」をみた。あやこさん(鈴木京香)が昔教師を辞めた理由。あの震災のあの時、自分の娘たちよりも小さい子供たちを置いて学校を出ようとした、その時の自分を責めて、きっと「自分には教師を続ける資格はない」と思ったのだと思う。

 

このドラマは、震災の時のいろんな立場のそれぞれの心情を、グラデーションのように細部にわたって描写している。自分の傷みに自覚的であるよう、それを言葉にするように促す。そうすることで癒える部分が少しでもある、と。繊細でとてもいいドラマだと思う。繊細すぎて、言葉がぐさぐさ刺さるけれど。みーちゃんとか、車椅子の選手とか。たまに菅波先生も。りょうちんも。今までの人生で「何もなかった」人なんて、いない。相手の方が自分より傷ついたから自分が傷ついてることを隠さないといけないなんてことは、ない。

 

こういうあやこさんの感情に心当たりがある。

自分の人生の核となるものが「恋愛だ」と思っていた独身時代、というか、高校生時代。

「今ブラピ(当時超人気)に口説かれてもキムタクに口説かれても落ちない自信があるわ」と豪語するくらいめちゃくちゃ好きな人がいた。実際よく知らない同級生に人づてに告られた時にそうやって丁重?にお断りした記憶もある。

 

このめちゃくちゃ好きになった人。初めての恋愛相手、のことを、大学3年の時、他に好きな人ができて恋愛感情が薄れていった。その瞬間のことを鮮明に覚えている。

「他に好きな人ができて恋愛感情が薄れた」なんてサラッと一文で書くのには少し抵抗があるほど、あの時の感情の揺れは「私の中で天変地異が起こった」くらいの出来事で。

自分の人生の核とか軸になっていた、「私はこの人が死ぬほど好き、死ぬほど好き」というものが、自分でも理解できないうちに「変化」してしまった。きっとこの人と結婚できなかったとしたら二番目に好きな人、と結婚することになるんだろう、と思い込んでいた。それくらい、「これ以上」がないって言えるくらい全身全霊で愛していた。

相手は10個くらい年齢の離れた大人だったけれど、相手も私にめちゃくちゃ好かれていることは自覚していたはず。年の差とか、相手の会社経営の事情もあって、「付き合っていた」と言えるかは微妙なのだけど、私の気持ちを好意的に受け止め、私の恋愛感情を受け入れてくれているとても居心地のいい関係だった。

「会社の事情」で忙しすぎて、なかなか会えない間に「同世代のなんとなく気になる人」に出会ってしまった。でも、別にめちゃくちゃ好きな人を嫌いになったりしていない。好きなまま。ものすごく久しぶりにほんの少し会えることになって、自分がどういう感情でどういう態度になるのかわからないまま会ったのだけど、会った瞬間に「目が泳いでる」と指摘されてしまった。

久々に会ったことの興奮とか期待とか、気になる人が出現したことに対する動揺とか、全部が私の「視線」に出てしまった。でも、「相手に好意は持ち続けている」けど「恋愛感情ではない感情」をどうしても理解してほしかった、という身勝手で複雑な感情。あと、そうなっている自分の状態を、まだ全然自分自身が受け入れきれていなかった。

絞り出すようにして、「・・・好きな人が、できた」と言ったら、その人は本当に間髪いれずに「おめでとう!良かったじゃん」と言った。私にはその「間髪いれず」が、その言われた当時は私自身が少し傷つき、今となっては相手が少し傷ついたのだと理解している。

 

その人と私は元々楽器の師弟関係でもあったので、私に恋愛感情が消えた後も良好な関係が長く続くのだけど、ここで冒頭の「あやこさんの感情」の話に戻る。

 

そこから私は好きな相手に「この先一生ずっと好き」と口に出さなくなった。

自分が本気で大好きな相手のことを、永遠に好きでいられる自信がなくなったから。

自分の感情が信用できなくなったから。嘘は嫌い。でも結果的に嘘になることも「だからこそ」口にしたくはない。

その人を傷つけてまで軽く拒否して、その直後の恋愛は「絶対上手くいかせないと申し訳ない」とすら思っていた(のに、最終的に上手くはいかなかった)。

 

一度決めたことを、投げ出す自分が好きじゃなかった。

 

つまり、一度愛した人のことを、愛さなくなった自分のことを、好きでいれるわけがなかった。世の中にはいろんな人がいて、数人と同時に付き合ったり、振って告白されて付き合ってすぐ別れて、みたいなことを器用にこなしている人も山ほどいるというのに、私はそれが出来なかった。

それどころか、「この恋愛を上手くいかせないとと思うのは前の好きな人に悪いことをしたから」みたいな一周まわって頭のおかしい理屈で自分をがんじがらめにしていた。

 

あやこさん。「あの一瞬、一瞬というのには少し長い。10分くらいだったかしらね」と生徒よりも家族を想っていた自分をずっと責めていた。それを理由に職を辞した。

私の中に未だに残る、あの一瞬。20年程経過しているのに、フラッシュバックというのだろうか、全然色褪せないその時の感情を思い出して、手に汗握る。

それを理由に、というか、皮切りに、どんどん恋愛がヘタになっていった、と思う。

もう今は。

その後いくつか恋愛もしたし、そういう「心変わりすることもある」自分を許容しているけれど、こうやって時折思い出しては書き留めておくのも、いいのかも。

私の心のグラデーションの、ほんの一部として。

 

全然、違う話をしているように聞こえるかもしれないけれど、あやこさんの感情に心当たりがある、というのは、「あの時一瞬でもこう思ってしまった自分を許してはいけない」という感情への対処。

誰にも言えないけれど、「あの思考が(それまでの冷静な自分であれば浮かぶはずじゃなかったのに)浮かんでしまったから」今後の人生はこうしよう、と自分を方向転換させる。強烈な意思で。

 

そこから方向転換して、時を経て行き着いて今の私がある。

この時のことも、もちろん転機になるけれど、あと2つほどは(恋愛で)衝撃的な転機がある。

その話はまたの機会に。

 

そういう私の人生、なかなか私は気に入っている。

f:id:Catherine_2:20211007111634j:plain